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比賣神社(ひめかみしゃ/奈良市)

父と夫が戦った壬申の乱。薄幸な運命をたどった十市皇女(とおちのひめみこ)をお祭りしています。十市皇女と夫大友皇子の仲にあやかり、「良縁」を求めてお参りする人も。

新薬師寺の石塀の前にある小さな神社。西へわずか10mほど離れた鏡神社の摂社です。元は十市皇女(とおちのひめみこ)が埋葬されていると言い伝えられてきた「比賣塚」がありました。皇女の御霊を鎮めるために、1981年に創建され、御鎮座祭が行われました。

 

十市皇女は、父が大海人皇子(天武天皇)、夫が大友皇子(天智天皇の子)。2人の皇子は叔父・甥の関係にあり、672年壬申の乱で剣を交えます。父と夫が敵対し、多くの豪族や兵を巻き込みながら古代日本最大の内乱を戦い、十市皇女の悲痛の思いはどれほど大きかったことでしょう。

 

戦は大海人皇子が勝利し、大友皇子は自害。夫亡き後、父のもとへ引き取られた十市皇女でしたが、678年、当時飛鳥にあった宮中で急逝しました。『日本書紀』には「(十市皇女を)赤穂に葬る」とあり、当地から徒歩約5分離れた、赤穂神社(奈良市高畑町)がその候補地のひとつとする説もあるようです。

 

小さな境内には、男女が幸せそうに寄り添う石彫の像があります。大友皇子と十市皇女でしょうか。鳥居横に掛けられている絵馬には「良縁」の文字。歴史上は悲劇の夫妻であっても、仲睦まじかった大友皇子と十市皇女にあやかって参拝する人たちに、2人の像がやさしく微笑みかけてくれます。

 

十二神将で有名な新薬師寺の拝観とあわせて、その前に建つ比賣神社にもお参りして、薄幸な運命をたどった十市皇女に思いを馳せてみてください。