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「壬申の乱」ゆかりの奈良歴史スポット ⑤ 夢見の桜(櫻本坊/吉野町)

「壬申の乱」は672年に勃発した古代日本最大の戦乱です。奈良・飛鳥から滋賀・大津に遷都した天智天皇(当時は「大君」)の後継の大君に同母弟の大海人皇子が有力視されていましたが、天智天皇は息子の大友皇子を後継にしようと太政大臣に任命しました。大海人皇子は“兄にとって大友皇子を大君にするには、私が一番の障壁だ”と身の危険を感じて、奈良吉野に移り住みました。
やがて天智天皇が崩御。大友皇子は「叔父を生かしておいてはならぬ」と考え、吉野への物資供給網を封じたり、配下に武器携帯を命じたりしました。この動きを察知した大海人皇子は「このままでは…」と挙兵を決断。両軍一進一退の後、大海人皇子軍が優勢となり、勝利。大海人皇子は天武天皇として即位しました。
2022年、壬申の乱から1350年が経ちました。奈良に伝わる「壬申の乱」スポットを巡り、シリーズで紹介していきます。

⑤夢見の桜(櫻本坊/吉野町)

 

大海人皇子の夢に現れた冬に咲き誇る吉野の桜。正夢の地に建つ櫻本坊。

 

大海人皇子がまだ吉野離宮にいて、挙兵の行動に出る以前のこと。

 

冬のある夜、大海人皇子は夢をご覧になられました。厳寒の冬の吉野山に、一本の満開の桜が咲き誇る夢でした。皇子は不思議に思い、修験道の祖・役行者の高弟である角乗を呼んで尋ねると、「桜の花は日本の花の王です。この夢は殿下が天皇の位につかれるよい知らせでしょう」と答えました。そして、壬申の乱。大海人皇子は勝利し、天武天皇として即位しました。

 

天武天皇は、夢に現れた桜を探しだそうと吉野の山に登り、見つけることができました。そして、その場所に道場を建立し、角乗が住職につきました。この、桜のもとに建てられた、天武天皇と持統天皇(天武天皇の皇后)の勅願所である道場が、現在の櫻本坊です。

 

夢に現れたものが現実に存在し、その意味することが通じて、願いが叶う。人知を超えた存在を感じさせられます。壬申の乱へと向かう大海人皇子を勇気づけたであろう、夢見の桜の伝説を紹介しました。

 

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