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奈良の名山を登る 高円山(奈良市)

高円(たかまど)山には、奈良の夏の風物詩「奈良大文字送り火」の「大」の字の火床(ひどこ)があります。標高432mの登りやすい山です。

奈良公園の東に標高500m未満の低山が連なっています。最も知名度が高く、すぐにそれと分かるのは若草山でしょう。そこから視線を少し南へずらしてみてください。若草山ほどではありませんが、三角形状に木々が切り払われて、短い草地に覆われたスペースが見つかります。その山が、高円山(標高432m)です。

 

独立峰ではないので、山容は整っているようには見えませんが、「ますらをの高円山に迫めたれば里に下りけるむざさびそこれ」(大伴坂上郎女)と詠まれた歌が『万葉集』にも収められている、由緒ある山です。

 

高円山を特徴づけているのは、先に記した三角形状のスペースです。これは何かというと、奈良の夏の夜空を焦がす「奈良大文字送り火」(例年8月15日)で煌々と燃える「大」の字の火床に当たります。

 

奈良市白毫寺町にある登山口から、休憩を入れながらのんびりと歩いて約90分。最初に大の左下のはらい部分に出ます。よほど大きな「大」なのでしょう、「大」であることを知っていなければ、何の形、何の字であるのか、さっぱり分かりませんが、切り開かれた開放感があり、奈良市街を見渡すパノラマ風景が存分に味わえます。

 

山頂は「大」にあらず、そこから15分ほど山道を行くと、二等三角点があります。さらに奥へと進み、有料道路「高円山ドライブウェイ」を渡った先に山頂が待っています。

 

奈良市民でも、若草山は登ったことがあるけれど、高円山はないという人が多いかもしれません。登山客も観光客もほとんどおらず、単独で登ると心細くなるかもしれませんが、誰にも気兼ねすることなく、どっぷりとマイペースで山歩きを楽しみたいという人に向いている山だと言えます。

 

近鉄奈良駅から登山口まで徒歩約40分。健脚の方はもちろん、新薬師寺や白毫寺を拝観したい方にもおすすめの山です。

 

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