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大和の伝統行事① 春日若宮おん祭

古都奈良の一年をしめる“漆黒の森”と“華麗な芸能”の神事

【遷幸の儀】

 

オー、オー。オー、オー。12月17日午前0時、春日大社、漆黒の境内。人智の及ばぬ天上から神の出御を伝える連呼が重くこだまする。春日大社の摂社・若宮神社のご祭神「天押雲根命(あめのおしくもねのみこと)」が、春日野原にしつらえられた御旅所へお遷りになる「遷幸(せんこう)の儀」だ。

 

歴史は、1136年、春日大社に祀られる4祭神のうちの天児屋根命(あめのこやねのみこと)(第三殿)と比売神(ひめのかみ)(第四殿)の御子神・天押雲根命に、風雨順時・五穀豊穣・万民安寧を祈願する祭事が営まれたとし、これが「おん祭」の由緒とされる。

 

遷幸中は静寂が支配する。人々は見守ることは許されても、人工の光源や撮影は一切禁じられ、頼りになるのは星、月、清めの松明のみ。夜も光に慣れた現代の私たちの目にとって、周囲はまさに音をも封じ込める“闇”。付き従う神人らに神は姿を隠され、厳かに粛々と、古記に「森が動く」と形容された遷幸が進んでいく。

 

 

 

【時代絵巻】

 

おん祭は毎年12月15日~18日に行われ、奈良の一年を締めくくる一大神事。単に天下泰平を祈願するだけではなく、華麗で多彩な芸能と儀式を継ぐ性格も帯びている。

 

まず15日、無事執行を祈る「大宿所(おおしゅくしょ)祭」があり、湯立巫女が沸騰する釜の湯を笹の束で宙へ飛散させる「御湯立(ゆみだて)」は諸方を祓い清める。

 

16日は宵宮。田楽が奉納されるなどして、深夜の「遷幸の儀」を待つことになる。

 

17日は「遷幸の儀」から「暁祭」へ続く。「暁祭」では祝詞奏上の後、神楽が奉納される。夜が明けると「お渡り式」の行列が登大路を下り、JR奈良駅を回って三条通りを進んで、一の鳥居へ回帰してくる。その行列は総勢約1000人。壮観な時代絵巻が見ものだ。

 

 

 

 

【芸能を捧げる】

 

若宮神社を出御された天押雲根命は、24時間以内にお帰りになる。その「還幸(かんこう)の儀」を前に、御旅所では雅楽、神楽、田楽、細男(せいのお)、猿学、舞楽といった諸種芸能が次から次へと奉納される。こうした芸能の競演が、芸能伝承という役割をおん祭に付け加えている。

 

4日間のスケールで描かれる、おん祭。すべてを耳目に入れるのは、時間的、体力的に制約もある。けれども、神事や芸能、何かひとつにでも触れて、古来人々が捧げてきた信仰にならって安寧を祈ると、それを見ていた春日の神々が微笑み返してくれるかもしれない。

 

 

 

【主な神事のスケジュール】

12月15日

午後1時 大宿所詣
午後2時半 御湯立(午後4時半、

午後6時も)

午後5時 大宿所祭

 

12月16日

午後2時頃 大和士宵宮詣
午後3時頃 田楽座宵宮詣
午後4時 宵宮祭

 

12月17日

午前0時 遷幸の儀式
午前1時 暁祭
午前10時 本殿祭
正 午 お渡り式
午後1時頃 松の下式、競馬
午後2時半 御旅所祭
午後3時半~ 伝統芸能の奉納など

(~午後10時半頃)

午後11時 還幸の儀

 

12月18日

午後1時 奉納相撲
午後2時 後宴能

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写真提供:奈良市観光協会