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『大和名所図会』今昔めぐり 31 耳成山(巻之六)(関連スポット:奈良県景観資産「耳成山を映す古池」)

江戸時代の作家・秋里籬島と絵師・竹原春朝斎が奈良を訪れ、183点の絵と紀行文をまとめ、寛政3年(1791年)に刊行した『大和名所図会』。奈良県内各地の風景や社寺境内の鳥瞰図、自然や旧跡、年中行事や名産・習俗・伝承などが掲載され、奈良の魅力が盛りだくさんに紹介されています。江戸時代の作家と絵師が見た奈良の名所風景をたどり、追体験を楽しめるスポットを紹介していきます。
【参考】『大日本名所図会 第1輯 第3編 大和名所図会』(大正8年)(国立国会図書館)

31.耳成山(巻之六)(関連スポット:奈良県景観資産「耳成山を映す古池」)

 

耳成山で遊山を楽しむ人々が描かれています。耳成山自体の山容は描かれておらず、遠景に見えるのは、形からして右が天香久山、左が畝傍山でしょう。耳成山とあわせて大和三山が意識されています。耳成山は標高139m。大和三山では最も低く、挿図に描かれているように、振袖姿でも、羽織帯刀でも、気軽に遊山できたと思われます。

 

振袖姿の4人の女性、右端のすねを丸出しにした男性が鑑賞しているのは、くちなしの花。右上に「山中に梔樹(くちなしのき)おほし。このゆえにくちなし山ともいふ」と記されています。本文にも「(耳成山は)四面田野にして、孤峯森然たり。山中に梔(くちなし)樹多し。因て又梔子山(くちなしやま)と呼ぶ」と紹介されています。

 

くちなしの花は6月~7月に開花します。女性たちも、扇子越しに女性たちをチラチラと覗き見ている「花より女性」のサムライも、厚着のように思えます。左右端の2人は裾をまくり上げて、いわば「半ズボン」状態。こうした姿の人物をあえて登場させることで、着こなしにこだわる身分・立場、そうでない気ままな身分・立場があったことを読み取らせてくれます。

 

耳成山の西麓に、「今水涸れて名ばかりなり」の「耳梨池」があり、大和名所図会はこの池にまつわる伝説=万葉集に記された悲恋の物語を再録しています。

 

「むかし女ありけり。名を鬘兒(かつらご)となんいひけり。」と始まる物語。なんでも男性3人が鬘兒を巡って恋争いをしており、そのことに心を痛めた鬘兒は「我身一つ消えなんは露よりもかろし、三人の男の心和平げがたきは石の如し」として、耳梨池に身を投げた-という切なく、やるせなく、何もそこまでと言いたくなる伝説です。

 

(俺たちが争ったばかりに…)と厚顔甚だしく嘆いた男3人の悲しみの歌が万葉集に収められています。

 

奈良県景観資産に選定されている「耳成山を映す古池」の情報ページはこちらです。
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