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奈良の昭和遺産①「幻の五新鉄道(旧国鉄五新線)」(昭和9年着工)

開通しなかった夢の紀伊山地越え鉄道路線。アーチ橋やトンネル跡が残っています。

江戸時代の風情が残る五條市の五條新町の町並み(重要伝統的建造物群保存地区)を抜けて、吉野川へ向かうと、住宅街のなかに美しいアーチが連なったコンクリート製の構造物があります。五條市と和歌山県新宮市を結ぶはずだった旧国鉄五新線の線路橋跡です。

 

五新線は旧国鉄が鉄道敷設を計画し、昭和14年(1939年)に着工。しかし、太平洋戦争の戦火の拡大とともに資材不足等を理由として、工事は中断に。戦後、工事が再開された時期もありましたが、結局、開通することはなく、「幻の五新鉄道」と呼ばれて、未完成のまま一部構造物が残されています。

 

一部の線路跡地は、現在、路線バス専用道路(一般車の通行不可)や大学研究機関による宇宙線観測所として利用されているようで(吉野川を渡るはずだった橋梁の橋脚に掲げられた案内板による)、五新線は決して無駄にはなっていないようです。

 

五條新町から吉野川を渡り、国道168号にほぼ沿うように進むと、路線バス専用道のバス停跡地やトンネル跡を巡ることができます。

 

線路が延び、列車がガタゴトと走るはずだった五新線。市街のコンクリート製アーチ橋や、山中にひっそりと口を開けているトンネル跡など、所々に昭和の夢の跡が残されています。
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